前回はマジワンLABにおいて初の試みであるブラッシュアップ企画として、ダイエットサプリの広告についてチェックポイントやテストすべき点などを伝えさせていただきました。今回は、製薬会社の睡眠サプリ広告についてチェックしていきましょう。
オフライン広告において重要な役割を果たしている折込チラシの様々なブラッシュアップケースを見ていくことで、自社のチラシを見直すポイントを見つけていただければ幸いです。
なお、画像を見ながらお話をさせていただくほうが分かりやすいので、実際の広告を用いて説明していきます。
しかし、著作権の問題があるため、特定の商品だと判断できるような商品名、本文、連絡先等を分からないように実物のチラシを加工させていただきました。その点をご理解ください。
ブラッシュアップ企画の2回目は、ナショナルブランドといわれる製薬会社の折込チラシです。
便宜上、B社としておきましょう。この商品は指定医薬部外品であるため、”寝付きの悪さや眠りの浅さを改善する”という具体的なベネフィットを表示できるのが強みとなります。
チラシを見ていただいて分かる通り、トップキャッチが「寝付けない」、「眠りが浅い」となっています。月や夜からイメージさせることで睡眠という部分を分かりやすく表現しています。
商品をシンプルにつなげてスパン!とオファーまで行くという、比較的構成としてはスピード感のあるタイプです。
内容を読みたい方には右側のテキストをじっくり読んでもらえるようになっていて、これは比較的よく使うスタイル。堂々としてシンプルに訴求が強い、企業ブランド力の高い場合に使われることが多い広告のタイプです。
ブランドというのは、様々な定義がありますが、ダイレクトマーケティングにおいて重要な点というと、「認知度」と「ブランド理解度」です。名前を聞いただけで何をしてくれる企業かということがしっかりと分かり、そのイメージが良いということです。
そういったブランド力の高い企業や商品群における広告の場合、トップキャッチ、商品ビジュアル、オファーまでを縦に一直線で見せることは有効な手段と言えるでしょう。
なお、前回行ったダイエットチラシの解説でも「一直線にシンプル」と記載をさせていただきましたが、今回の一直線との違いを補足しておきましょう。
基本的には、上から下へ真ん中一直線にオファーへと向かうものが最もシンプルなレイアウトであり、決断速度が速いと考えています。このレイアウトが適しているのは、今回のようなブランド力の高いメーカー、かつベネフィットの訴求ができるものと言えるでしょう。なぜなら、コピーがシンプルでも説得がしやすいからです。
一方で、前回のようにダイエットなどの機能性とはいえ、少し説明がないと差別ポイントが伝わりにくいタイプの商品の場合、斜めに視線誘導することによって「気になる人は、他のコンテンツで立ち止まる」ように設計していきます。
そのため、説得のシンプルさがほんの少し異なるだけで、まっすぐ一直線にするのか、斜めに一直線にするのかという判断が変わってくるということになります。
こういった点から、この広告自体のレスポンスは、見た感じ「良い作りである」と言えます。以前からこういった睡眠系商品のチラシや新聞広告には同じような構成のものが多いので、スタンダードであり、もはやフォーマットになっているといっても過言ではありません。それに加え、指定医薬部外品なので、それこそ体験談のようなコンテンツが使えません。そういった部分からも、このようなテキストでしっかりと効能・効果を見せていくことが最初に作るべきチラシかなと思います。
B社の折込広告は、かなり王道なスタイルになるためブラッシュアップしにくいのが特徴ですね。
ですが、当然全くブラッシュアップができないというわけではありませんのでブラッシュアップポイントを解説していきますね。
まず、初回でもお伝えした通り、折込チラシは四隅をいかにケアするかが重要です。
このチラシの場合、右下にプレゼントと、左下に価格のオファーがあります。新聞折込の場合は横向きにチラシが折り込まれる感じになるため、この左下の金額部分が実際は“上に来る”という点が大きなポイントです。そして、左上のロゴマークの部分も上に入ってくる感じですね。そういう観点から言うと、チラシの上下で、この2つのオファーが見えるのは良いと思います。
次にヘッド部分を見ていきましょう。左上に企業ロゴがあります。B社のチラシに関しては、企業ロゴが見えることで相関訴求につながるので良いと思います。そして、右上にある月のマークは折込だと見えにくい部分なので理にかなっていると言えるでしょう。
ただ、せっかくの企業ロゴがある上の部分がちょっと暗く見えてしまうので、明るくするテクニックとして上部分に帯を入れてしまうのも良いかもしれません。それにより、企業ロゴが目立つことになり、レスポンスが上がる可能性はあります。あとは、右肩も見る可能性を考えるのであれば「70%オフ」のようなアイコンを入れてしまうというのもありかなと思いました。
まとめますと、四隅に関してはかなり良いのですが、そのなかであえて言うならば、暗い色に企業ロゴが載っているので少し弱くなっている可能性があるという点です。
さらに企業のロゴ規定によって問題なければ、企業ロゴをもうひと回りか二回りほど大きくしたほうが今回のケースでは良いような気がします。
このロゴの大きさの判断は、先程も記載した通り「単なる認知度ではなくポジティブなイメージがある」というケースに有効です。企業ブランドの評価を丁寧に行うことで、ロゴの大きさに関しても適切な判断ができると思います。
このチラシはよく使われる構成でもあるため、ひとつひとつのコンテンツをしっかりとテストしていくことが重要ではありますが、構成にもテストするポイントがあります。
そのポイントとしては、「最近、寝付けない」「近頃、眠りが浅い」という悩みコピー部分のアンサーが、スピーディに説得したい場合は、右側のテキストではなく、本来はボトルのそばで解決したほうが良いのではないかという点です。
悩みの次が商品名という流れになっていて、そのあと一度右側を読まないとストンと下に落ちていかない仕組みになっているのがちょっともったいないように見えますね・・・。
そんな悩みに~のあとの商品名を縦のセンター、つまり商品画像の右側に縦にズバンと流すことでオファーまで一気に行けたのではないかという気がしています。まだスペースがあるので、縦リード、ないしは縦キャッチを入れてみることは検討できる部分ではないでしょうか。
この縦コピーを入れるかどうかのテストが一番変化のあるところではないかと思います。トップキャッチから商品を軸としてすーっと見せているのがこのチラシの良さなので、どちらかに縦コピーを入れることで速度がより上がってレスポンスが一段変わるかなという風に思います。
次に、細かいパーツにおけるテスト箇所を見ていきましょう。
まずはボトルですね。このチラシ画像ではお見せできないのですが、形状がしっかりとした茶色の瓶が宙に浮いたような形の写真になっています。こういった浮遊感のあるボトルの置き方ではなく、しっかりと机に置いたような静態のイメージもテストしてみるべきではないかと感じています。
その理由となるのが、企業ブランドです。企業ロゴが「企業の誠実性や製品の確からしさ」というイメージである可能性が高いと考えているので、悩みを軸にしていくならボトルも「企業のブランドイメージ」を表現しても良いと思います。そのため、ボトル写真のテストは必要だと感じました。
あと、先程も少しお伝えしましたが、指定医薬部外品のボトルネックでもあるのが「体験談を書けない」ということです。当然ですが、裏面でも体験談における説得ができません。そこから考えると、右上に月のビジュアルを作ってしまったのは、少しもったいないような気がしています。ユーザーイメージのような形で困っている女性の顔などを入れて、体験談がない部分を補足しても良いのかなと思いました。
夜という部分を分かりやすくするべきなのか、悩みという記号を強くしていくべきなのかという点で、右上は大事なテストポイントになるのではないでしょうか。
先程の、「体験談がない部分を補足」という点についてもう少し解説いたします。
厳密には薬機法の解釈によって、消費者のような人を出すことをNGとしている企業もありますが、薬機法では「体験者による効果の保証」をNGとしています。そのため、悩みだけを記載している広告は存在しています。そういった表現がOKであるならば、悩み部分をもう少し具体的に挙げても良いのかなという気がしています。
例えば、「30分以上寝付けない」とか、「気がついたらもう2時、3時」といった感じです。オフライン広告である折込チラシの特性を考えるなら、例えば「また新聞配達の音で目が覚めた」みたいな感じは共感を得やすい悩みとも言えます。効果効能の範囲を超えない程度で、かつ「あるある」と共感を得られる悩みを記載することで、説得性を上げられ、体験談のなさをカバーできるかもしれません。
そして、医薬部外品は、機能性表示食品よりも少し強い訴求を言えるので、「1日1回3錠で効く」といったワードが使える強みを活かしてコピーに入れるなど、効果効能の強さを文章でしっかりとケアしていったほうが良いと思います。例えば、ベタなところで言えば「やっぱり製薬会社品質で決まりです」みたいな太鼓判的な〆の言葉を入れてあげることで、購入への最後の後押しとなる可能性はあります。こういったテキストのアレンジをしていく部分と、縦コピーを入れることでこのレイアウトの良さを際立たせることが有効ではないかと思います。
それでは、前回同様にマジワンが推奨する“クリエイティブテストの順番”を見ていきましょう。
まずは、全体のレイアウトの調整を行い、現在のレイアウトの良さを際立たせること行いたいと思います。先程お伝えした「縦コピー」と、オファーの直前にコピーを入れるテストをしてみたいですね。
具体的に言うと、「そんな悩みに1日1回3錠で効く」というフレーズをトップに入れてしまって、この辺りを商品名とうまく絡ませて逃げたような感じにし、最後にもコピーを入れるようなレイアウトに変更し、右側をしっかり読まない人でも、商品の理解が進むように調整するイメージです。
それ以降は、ひとつひとつのパーツを、テストしていきます。
商品の信頼性をしっかりと担保するという今回のチラシの企画意図に沿っていると考えられる、ロゴ周りの調整と、商品のボトルビジュアルのテストを行います。
そして、最後はトップキャッチと、月の代わりに女性の顔などに入れ替えてみるというテストをしてみると良いかもしれません。
このように、レイアウトが基本通りであるケースは、レイアウトのアレンジでより良くなるか。企画意図にそった無難と考えられるテスト、最後に細かいパーツのテスト、という3段階ほどに分けてテストをすることで、さらに良い部分が見えてくるんじゃないかなという気がします。
チラシのブラッシュアップにおいては、テストのステップが重要です。
手堅く上がるテストをしたあとに、主要なテストをして、最後にどっちが良いか分からないテストを行うという3段階に分けてやるのがおすすめ。今回はこの説得性のスピードが速い部分が理にかなっているので、そこにセンターの縦キャッチを入れることで、より速度が上がるのではないかと仮説を出しています。
ただし、目標値と明らかに乖離している、または訴求部分からテストしなければいけないケースなど、企業や商品の状況によってテストの判断基準は異なります。上記はあくまでもスタンダードなテストの流れということでお考えください。
以上です。
こういったテストは「絶対にこのテストのステップでやるべき」というよりも「商品の良さから、どういう組み方をしていくか」という風に考えるのが一番の近道になるのではないかと思っています。他にも「こういったケースはどう?」といった質問があれば、ぜひ気軽にお問い合わせください。
次回もまた、異なる企業の折込チラシをマジワン目線でブラッシュアップしていきます。楽しみにしていてくださいね。また別のコンテンツもご覧いただければと思います。