前回は、メディアの発展で大きく変わっていった通販の歴史についてお伝えしました。今回は、通販に関係する法整備が進んだ1960年代以降について詳しくお話ししてきましょう。
1960年代に入ると、第二次世界大戦中に通販を休止していた高島屋やそごうなどの百貨店、主婦の友社などの出版社が通販を再開し始めます。戦後の高度経済成長に伴って人々の生活レベルが上がり、趣味や教育に費やすお金が増えたため、一気に通販事業は拡大していったのです。しかし、消費者が積極的に購入するその一方で、様々なトラブルが増えていき、法整備が必要になっていきました。
この時期の消費者トラブルとして大きく目立ったものが、1960年(昭和35年)の「偽牛缶事件」です。これは、牛の絵柄が描いてある市販缶詰の牛肉大和煮が、実は牛ではなくクジラ肉を使った商品だったという事件。消費者から相談を受けた主婦連(主婦連合会)が調査したところ、牛缶の多くで牛肉を使用していなかったことがわかりました。この事件をきっかけに、「不当表示」や「食品偽装」が問題になりだしたのです。
この時代は上記のような消費者トラブルの増加に伴い、一気に法整備が進んでいきました。
これらのような、通販事業にとって大きな影響をおよぼす法律ができあがっていったのです。
これは通販に限った問題ではありませんが、1970年代に入って食品問題や健康被害が増えてきます。その結果、特殊法人「国民生活センター」が設立されました。国民生活の安定と向上のために、国民生活センターが公平な立場で相談事業や商品テストなどを行うようになったのです。
また、無限連鎖講(ネットワークビジネス、またはねずみ講)として「天下一家の会」によるトラブルが問題化したり、農林省によるDDTやBHCなどの有機塩素系の農薬使用禁止になったりしたのもこの時期です。
なお、同時期に販売員が突然自宅を訪問してきて、高額な商品を売りつけるといった「訪問販売」によるトラブルも目立ちはじめます。その結果、1972年(昭和47年)には「割賦販売法」が改正となり、新たに消費者側から契約解除ができる「クーリング・オフ制度」が創設されていました。なお、創設当時のクーリング・オフ期間はわずか4日間でしたが、現在は8日間まで延びています。(マルチ商法と内職商法は20日まで)
この時代に作られた法律は、どれも通販が起点になっているわけではありません。しかし、今の通販に大きな影響を与えるようになったことは事実です。時代的に消費社会が多様化していき、商品の品質、性能、安全性に関する問題から、販売方法や契約等に関するものへとシフトしていき、消費者被害防止のための仕組みが求められるようになっていったのかもしれませんね。
以上です。
今回は、通販の歴史シリーズ第3弾として、通販に関係する法整備についてお伝えしました。次回は、いよいよ現在の流れにつながる変化となっていきます。1980~90年代に起こった通販の変化についてお伝えしていく予定です。
また別のコンテンツもご覧いただければと思います。