今回のテーマは、社内の悩みとして多いマネージメント(人材管理)です。
マネージメントというと“管理”という言葉に影響を受けて、「人をコントロールする」という手法に重きを置かれがちです。しかし、マネージメントは“コントロール”ではなく、どちらかというと“クリエイティブな作業”ではないかと感じています。今回は、前編・後編の2回に分けて社内のマネージメントについてお話ししていきましょう。
まれに「思い通りに動かない社員を、どう変えていったら良いですか?」という相談を受けることがあります。ここで気になるポイントは「周りの人を変えようとしている」という点ではないかと思うのです。
まず、マネージメントをしていく上で「基本的に、他人の行動や意識を変えることは難易度が高い」と認識しておきましょう。では、なぜ人の行動や意識を変えることは難易度が高いのか・・・。
その根底としてあるのが“人は変化を嫌う生きものである”という事実です。
人は、他人から行動や意識を変えるように指摘されても、簡単に変わるということはほとんどありません。例えば、お母さんが子どもに対して「遅刻するから早く起きなさい」と何度注意したとしても、子どもご自身の意識が変わらなければ早起きできるようにならないのと同じですね。
人間の行動や意識が変化するためには、ものすごい労力を必要とします。そのため、「これだけ言っても、まだ伝わらない」ということはよくあるケースです。そのくらい人の根底にある価値観のような部分は変化させにくいもの。実際に、これまでマネージメントをしてきた経験からいっても、声かけや注意だけで部下の行動や意識が大きく変化したという経験は少ないと感じています。
ただ、一緒に仕事をしていく上で、やはりその人に「思ったように仕事をして欲しい」と願うのが管理者側の心理ですよね。では、周りの人の行動や意識を変えることなく、望むような方向へ動かすためにはどうしたら良いのでしょうか。
人を変えずに、結果を変えるための手法で考えられるものは以下の2点。
「環境の変化」と「ルールの変化」です。
環境を変える方法で最もわかりやすいのが人事。
つまり、部署異動や役職異動などにより、人間関係や仕事内容を変えるなどの環境調整です。営業からクリエイティブの部門へ異動してみる、もしくはその逆の異動をしてみるなどもひとつの方法でしょう。
人には適性があり、短時間でギュッと集中して働くことが適している人もいれば、じっくりとひとつのことに向き合うほうが適している人もいます。そのため、既存の部署では働きづらさを感じていた人でも、適切な部署へ異動することにより、生き生きと仕事ができるようになったというケースは少なくありません。
ただし、部署の異動となると、気軽にコロコロと変えるのは難しいケースも多いかもしれませんね。そのような場合、同一部署内で担当してもらう仕事を変えてみる、上司を変えてみるといった細かな変化を加えてみるのも良いのではないかと思います。
例えば、過去の経験で「席順を変えただけで働きかたが変わった」というケースがあります。
周りに影響を受けやすいタイプの人がいたので、試しによく働く人の隣の席にしてみたのです。すると、隣席の人の影響を受け、その人の仕事効率が驚くほどアップしました。ちなみに、席順で言えば、おしゃべりが好きな人同士を並べないようにするなども効果的です。
また、上司との関係も相性があるかもしれませんね。
部下と密に連携を取りたいタイプと、部下に任せるタイプの上司がいた場合、どちらと相性があうかは人によって異なります。それは、どちらの上司が良い・悪いというのではなく、あくまでも上司と部下の相性の問題です。当然ではありますが、人のタイプはそれぞれ。細かく質問や確認をしたい部下もいれば、自己裁量でどんどん進めたいと思う部下もいるわけです。このペアを変えるだけで働きやすくなった!というケースも多いですよ。
ちなみに、周囲に人がいない状況で働くほうが集中できるタイプもいます。コロナ禍で在宅勤務を選ぶことができるようになり、これが環境調整のひとつのきっかけになったという人もいるでしょう。
これらの変化は、ネガティブに捉える必要はありません。
あくまでも“より働きやすい環境を作るための調整”と考えましょう。部下自身の行動や意識を声かけで変えさせようとするより、上記のように働く環境に少し変化を加えることを模索してみるのがおすすめです。これらの変化は意外と効果がでることが多いので、ぜひ試してみてくださいね。
以上です。
今回は、「マネージメントにおけるクリエイティビティ」というテーマから、人を変えることの難しさと環境調整についてお伝えしました。次回は、この続きをお伝えしていく予定です。
また別のコンテンツもご覧いただければと思います。