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【世代別成功モデル】九州エリアの通販事業拡大とCRMのはじまり

【世代別成功モデル】九州エリアの通販事業拡大とCRMのはじまり 成功事例

前回のコラム、【世代別成功モデル】通販が華々しく成長していったユートピア期では、通販がはじまったばかりの頃の成功モデルの話をさせていただきました。今回は1990年代(この時代を、便宜上「通販第1世代」と定義させていただきます)に焦点を当てていきます。

1900年代は通販というものが徐々に認知されてきて、CRMといった考え方やRFMなどの手法ができはじめた時期です。この時代は、どのようなビジネスモデルが成功していったのでしょうか。

なお、文中で「~な事例が出てきた」といったフレーズを使うことがありますが、こちらは説明のために過去の事例としてピックアップさせていただいております。1990年は、まだ代表も学生だったということもあり、当社の事例というわけではありませんのでご了承ください。

九州発の通販企業が発展してきた経緯

90年代に入り、九州を中心とした企業が通信販売の業界に登場しはじめました。通販で成功し、大きくなるメーカーが出てきます。九州は現在でも通販企業が盛んなエリアですが、なぜ九州で通販事業が大きく成長したのでしょうか?

まず、前提として、この時代はまだバブルの名残でかなり好景気が続いていました。
とはいえ、スーパーなどの売り場は大手メーカーが占有している状態で、新規参入は難しいのが現実。しかも、店頭に並ぶ商品は東京で商談が決まってしまうことが多かったため、九州のメーカーがそこに販路を見いだすことは難しかったようです。その点、通販はまだ“怪しい”と思われていた時期で、逆に大手メーカーは参入しにくい状況でした。そのような理由から、通販という仕組みの中で九州企業が一気に伸びてきたのではないかと考えられています。

流通における販路の交渉条件が整いにくい九州だったからこそ、通販という事業が盛んになったのではないかと推測されます。

うまくいく通販の仕組みができあがってきた

第1世代はメディアの仕組みが整い、うまく回りはじめた時代です。
MRがしっかりと2以上出せる仕組みとして回り出してきたのがこの時期。ひとつ当たりを出すと、事業を一気に拡大できるレベルだったと言われています。事業の回り方が、ユートピア期よりさらにスピーディーになっていきました。

それに加え、“健康ブーム”という時代的な背景もあります。ニーズと商品がマッチしたという流れもあり、急成長した企業が多かったのではないかと考えられています。

なお、この時代の後期にCRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)の研究が進み、その概念が確立されました。今でいう「RFM分析」の根幹ができた時期です。

例えば、この時代にクロスセルをする場合、顧客リストからカタログを送るケースがほとんどでした。しかし、テレビなど、その他のメディアを回していくと、リストだけがどんどん増えていくというケースも少なくありません。当然ではありますが、すべてのリストにカタログを送っていくとロスが増えていきます。これらの状況から「もしかしたらロスではないか?」と気がつき、リストを検討するようになってたのがCRMのはじまりではないかと考えられています。ただし、リスト分析が進んだ昨今の状況に比べるとそれほど厳密ではなく、当時はまだ「おおよそ」というレベルでリストを絞る程度の考え方でした。

なお、現状のようにリピート通販の仕組みが整理されてきた状況下であれば、Frequencyをしっかり見ていれば、Monetaryが確定します。そのため、定期購入を続けてもらうことができればRecencyは確保されていると言えるでしょう。Frequency3以上であれば、Recencyだけを見ていればOKといっても過言ではありません。

しかし、当時はどの通販会社でもフロント商品の購入以降は、いろいろなサプリメントや化粧品、食品などを販売するためのカタログを送ることがほとんどでした。そういったクロス販売を増やしていくうえで、RFMを見ていくことは重要になっていきます。RMFは、リストからコアな顧客をどうやって拾っていくかを検討する際に非常に役に立ちます。

近年においては、RFMだけでなく居住区、つまりエリアもチェックが必要な項目。なぜなら、エリアによって文化や気温が異なり、商品によっては気温や天候が左右しやすいものがあるからです。それに加えて性別、年齢といった部分も要チェック部分と言えるでしょう。また、デジタルの中においては、趣味嗜好(トライブ)の掛け合わせで購買確率が変わってくると考えられています。これらを踏まえると、今後はAIを活用したCRMの重要度が増してくるかもしれませんね。

今回のまとめ

  • 実店舗で販路拡大がしにくい地方だったからこそ、通販事業が盛んになった
  • “健康ブーム”という時代的なニーズと商品がマッチしてブレイクした企業が多い
  • クロスセル用のリストを検討しはじめたことでCRMの研究が進んだ

以上です。
RMFが上記のような経緯ではじまったこと、そして、それにより指標を見てきたという流れがあります。「この当時、こういった部分で当たりパターンが作られていた」という事実を知ることは、重要な考察ではないでしょうか。

次回の【世代別成功モデル】は、定期コースが定着してきた2000年以降、第2世代に焦点を当てていく予定です。また別のコンテンツもご覧いただければと思います。

※RFM分析とは
Recency(最近の購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額のボリューム)で顧客をランク付けする手法。例えば、昔はたくさん買っていたとしても、Recencyで2年以上たっていたら弱いと判断されます。なお、現在もリストの分析においてはRecencyが最も強いです。

マジワン
この記事を書いた人
福岡のプランニングエージェンシー「マジワン」が運営するLABの管理人。 ダイレクトマーケティングコンサルタント/クリエイティブディレクター/プランナーとダイレクトマーケティングでの長い経験から、幅広くサポートします。 デジタルからオフライン、新規広告からCRM、そして商品開発と新しいアイディアを横断しながら実践しています。売上アップのための仮説と実証を繰り返しながら、マーケティングという社会実験を楽しんでいます。

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