
購買行動の根底にあるZ世代の価値観を正しく理解するには、単に「若者はSNSを信じる」とひとくくりにするだけでは不十分でしょう。
前編では、団塊世代からZ世代までの価値観の変遷を追いながら、Z世代の“評価軸”の移り変わりについて解説しました。この後編では、「集団主義/個人主義」や「影響メディアの多様性」に着目し、Z世代を複数のタイプに分けたうえで、企業が取るべきマーケティング戦略やコミュニケーション手法をマジワンの目線で解説していきます。
前回の記事でもお伝えしましたが、Z世代は一枚岩ではなく、多層化されたミニコミュニティの集合体と言えます。年齢層や世代で単純にくくって分析しても意味が薄く、マーケティングターゲット=年齢層の区分けだけでは通用しません。
ニッセイ基礎研究所の研究でも、Z世代の多様化とその瞬間的トレンドの局地性から「Z世代全体の動向を一括で捉えるのは困難」と指摘されています。これまでのマスマーケティングの常識では、Z世代という巨大な市場を的確に捉えることはできないのです。
現在では、SNSを発信地とする局所的なムーブメントも価値化される時代になっているため、年齢カテゴリだけでは戦略設計がうまく機能しません。そのため、従来のデモグラフィックな分析を超え、より細分化された視点が求められています。
参照:ニッセイ基礎研究所「Z世代の消費を読み解く5つのキーワード」
Z世代の意思決定基準は、社会全体の流行ではなく、自分が所属する小さく信頼できるコミュニティに依存する傾向があります。「世間で何が売れているか」ではなく、「自分のコミュニティで何が共感されるか」が購買の判断軸になるということです。例えば、エシカルやサステナブル、作り手のストーリーといった商品の背景に価値を見出すのも、所属するコミュニティ内でそうした価値観が共有されているからと言えるでしょう。
また、Z世代は「emotional consumption(感情消費)」への感性が高いのが特徴です。「エモい」「推し活」といったキーワードに表れるように、コミュニティ内で感情や価値観を共有することに、消費の重点を置いています。
つまりZ世代にとって消費とは、単なる商品購入ではなく、自分が属するコミュニティでのアイデンティティ表現そのものなのです。そのため、単純な価格競争や機能性だけでは、彼らの心を掴むことは難しくなっています。
Z世代の消費者ペルソナを可視化すると、以下のように大きく2軸4象限モデルに分割されると考えられています。
縦軸:集団主義 vs 個人主義
横軸:マスメディア型 vs SNS型

CMやランキングに強く影響を受けるタイプです。
「みんなが使っているから安心」、「話題だから選ぶ」といった判断基準を持ち、マス広告や話題性に反応する傾向があります。比較的Z世代の中では少数派ですが、一定層存在しています。
このタイプに有効なアプローチとしては、テレビCMや大手メディアでの露出強化、「売れてます」や「SNSでも話題」などの権威・人気訴求、有名人・タレントを使った信頼性の演出などが挙げられます。従来型のマスマーケティング手法が比較的効果的に機能するセグメントと言えるでしょう。
情報に慎重で、信頼できる情報源(新聞、専門家)を重視するタイプです。ブランドや商品の背景(社会貢献・職人技・哲学)に価値を見出し、価格ではなく意味や理念で選ぶ傾向があります。
有効なアプローチとしては、ストーリー性のある商品紹介(背景・作り手・思想)、メディア掲載や専門家推薦の活用、サステナブルやエシカル訴求が刺さりやすい特性を活用すると良いでしょう。このセグメントは質の高い情報と深い物語性を求めているため、表面的なアプローチでは響きません。
フォロワーや友人の反応を重視し、「自分とその周囲の世界」の中で共感されるかどうかが判断基準となるタイプです。承認欲求よりも”共鳴”がキーワードとなり、企業公式よりも、リアルな声や感情が響く特徴があります。
有効なアプローチは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)やインフルエンサー施策、企業の”人格”を出す(SNSでの素の発信や誠実な対応)、クチコミ、レビュー、共感ストーリーの共有などです。このセグメントは特に、ブランドの人間性や透明性を重視する傾向が強いと言えるでしょう。
SNSで盛り上がっていることに敏感で、自分のコミュニティの”空気”に合わせて動くタイプです。流行やバズに反応しやすい一方で、ブームの消費になりがちな側面もあります。
有効なアプローチとしては、バズ施策(ハッシュタグキャンペーン、短期話題化)、コミュニティ内での熱狂的話題作り、”一緒に盛り上がる”体験型プロモーション(コラボ・イベント)などが効果的です。瞬発力のある施策で注目を集めることが重要ですが、持続性のある関係構築も同時に考慮する必要があります。
現代において、SNSとインフルエンサーの信頼度は、企業ブランドを上回るケースが増加しています。これは従来のマーケティングの前提を大きく覆す現象と言えるでしょう。もはや画一的なペルソナ設計ではなく、ブランドの”人格化”と”思想提示”がカギとなっています。企業は単なる商品・サービス提供者ではなく、一個の人格として消費者と対話する姿勢が求められているのです。
特に重要なのは、コアファンとの関係性の構築、すなわち共感の設計力です。浅く広い関係性よりも、深く狭い関係性を重視し、そこから徐々に輪を広げていくアプローチが効果的となっています。
現代のマーケティングにおいて、共感性と信頼性が重視されているため、ファンを集めていくようなブランドパーソナリティが必須となっています。メーカー側にもインフルエンサー、つまり、このブランドをしっかりと発信できる存在が必要になってくる時代に突入したと言えるでしょう。
今後の重要ポイントは以下の3つ。
商品を通して「誰とどうつながるか」が評価される時代だからこそ、企業は「どう売るか」ではなく、「どう寄り添うか」を考える必要があります。
これからの時代は、モノの機能価値だけでなく「物語」と「共感」を提供できる企業が支持されるのではないでしょうか。消費者は単なる買い手ではなく、ブランドの価値創造に参加するパートナーとして位置づけられ、企業と消費者が一緒になって意味のあるストーリーを紡いでいく。そんなマーケティングの形が求められているのです。
Z世代のマーケティングにおいて最も重要なのは、彼らが決して一枚岩ではないことを理解することです。今回ご紹介した「集団主義/個人主義」と「マスメディア型/SNS型」という2つの軸で4つのセグメントに分けることで、より精緻なアプローチが可能になります。
従来の年齢層による画一的なターゲティングから脱却し、それぞれのコミュニティに寄り添った戦略設計が不可欠です。企業には単なる商品提供者ではなく、人格を持った存在として消費者と対話し、共感と信頼に基づいた関係性を構築することが求められています。
今後のマーケティングは「どう売るか」から「どう寄り添うか」へとパラダイムシフトが進み、物語と共感を軸とした新しい価値創造の時代が到来するでしょう。Z世代との真の接点を見つけるためには、彼らの多様性を受け入れ、それぞれの価値観に真摯に向き合う姿勢が何よりも大切なのです。
以上です。
今回は2回に分けて、Z世代の購買行動を解き明かし、企業がいま取るべきマーケティング戦略をマジワンの目線からお話しをさせていただきました。
また別のコンテンツもご覧いただければと思います。