前回のコラム【世代別成功モデル】初回定期コースの誕生とその影響では、初回定期コースが誕生したことによる変化をお伝えしてきました。今回はその初回定期コースが、アフィリエイトと連動することでさらに進化していった話しをしていきます。
※アフィリエイトとは
インターネットにおける「成果報酬型広告」を指します。個人や企業が自身のサイトやメール等に特定のサイトや商品の広告を掲載し、閲覧者がそのリンクを経由して会員登録をしたり、商品を購入したりするとリンク元に報酬が支払われる仕組みです。
前回に引き続き、初回定期コースがこの時代のキーです。まず、大きなポイントとして、初回定期コースが誕生したことにより、初回のCPAが固定されて財務が回りやすくなりました。
また、このあたりの時代からネット通販が主流になり、データのみで消費者にメッセージが届く時代になりました。例えば、雑誌・新聞・チラシ・DMなどに代表されるようなオフライン広告は紙などの資源や郵送コストがかかりますが、ネットでのセールスは大きく原価がかかるわけではないので、メッセージの伝達コストが下がっています。それに加え、購入までの導線がしっかりと見えるようになり、アフィリエイトサービスというものが誕生しました。その結果、アフィリエイトをうまく活用した企業が台頭していきます。
CPAが固定化されたことで利益が確定しやすくなり、アフィリエイトの活用がさかんになっていきました。2015年前後は、アフィリエイトをうまく活用できた企業が伸びた印象がありますね。アフィリエイトで急拡大する成功事例が増えていったのがこの時代の特徴です。
アフィリエイトサービスの開始により、ブログのような個人メディアを持つアフィリエイターと契約することで、各通販会社が手軽に告知活動できるようになりました。では、なぜ単品リピート通販とアフィリエイトの相性が良かったのでしょうか。
例えば、耐久財のような商品の販売促進費は、絶対に商品価格を超えることができません。5万円のテレビを売るために企業が払える販売促進費を10%としたとき、5,000円までがアフィリエイターに支払える金額というのが一般的です。
その一方で、単品リピート通販の場合、初回オファーが1,000円でも、定期コースでのリピートが将来的な利益として見込めるため、契約内容に応じてアフィリエイターに数倍、場合によっては10,000円以上入るような仕組みになっていました。初回定期コースとアフィリエイトは相性の良い組み合わせだったと言えます。
その後、初回オファーを安くしてミニマム何回以上のお届けが条件という、“最低回数”が決まった定期コースに加入させるスタイルの購入が定着していきます。その結果、財務がさらに組みやすくなり、新規獲得だけでなく、リピートしやすくするような広告の印象(ブランド性)やCRMという継続性、コールへの対応といったフルフィルメントに力を入れることができるようになっていきました。
アフィリエイトによるビジネスモデルが順調に成長していくと、商品設計、マーケットづくり、丁寧に獲得できるLPのつくりなどが重要になっていきます。通信販売事業そのものが仕組み化されてきたのがこの時代です。
一定のお金があって、それなりに売れる商品があって、広告設計やCRMでしっかりと管理された状況なら、あとはアフィリエイト会社と契約をすれば流れるような仕組みづくりができる時期になってきていました。
マイナスから始まるという部分で通販に参入する障壁は同じですが、アフィリエイトを含めた財務の仕組みが整ってきたため、広告の当たり外れに左右される“ギャンブル”ではなく、しっかりとお金を“投資”する対象となっていったのです。
広告主にとっても、アフィリエイターにとっても良いことづくめに思われるアフィリエイトですが、初回定期コースができたと同様に、アフィリエイト広告をめぐるトラブルが生じ始めます。
例えば、最も問題になっているのが“責任の所在”です。
これまでのように商品の広告をそのメーカーが行う場合、当然ですが、広告主にその広告内容の責任があります。しかし、アフィリエイトの場合、仲介役としてASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)が存在しており、あくまでもアフィリエイターは自主的に告知をしています。しかもこの時点ではまだ金銭の授受も完了していないため、アフィリエイトの広告掲載における多くのケースにおいて、すべての広告内容の確認を販売企業が行うことは基本的にありませんでした。そのため、告知の責任がメーカーに存在しているのか?という点が曖昧であり、行政の指導がしにくかったということがあります。
アフィリエイターは、できるだけ利益を増やそうとする自身の判断や、本当に良い商品だと思いこんでしまったケースなども含めて、表現が主観的になりがちです。この主観が時には誇大として受け止められる傾向にあります。結果、意図をせずとも、景品表示法、医薬品医療機器等法、消費者安全法などの広告規制に違反している、もしくは違反する恐れがあるサイトが作られてしまっていたのです。
こうした現状を踏まえ、消費者庁はアフィリエイト広告について「虚偽・誇大なアフィリエイト広告に関する注意喚起」を消費者に向けて行いました。そして、広告主である企業への責任追及だけでなく、悪質な不当表示を繰り返しているアフィリエイターやASPにも責任を追及していく姿勢を示しています。
現在では、アフィリエイトにおいてもしっかりと広告主の記載を行うことが必要となっており、整備がされてきています。
以上です。
この当時もオフライン広告のギャンブル性が高かったという事実は変わりません。1990年代の序盤くらいに成長した企業は比較的オフライン広告を活用していた傾向が強く、デジタルで成長する企業はしっかり仕組みとして動いている企業が多かったように感じています。オフラインの仕組みを維持している企業が残っている反面、この時代のタイミングにおける成長企業のイメージはアフィリエイトの活用が大きなポイントとなっていたと言えるでしょう。
また、インターネットの普及したことにより、ECが一般化していきました。新しいビジネスの仕組みができあがると、すぐに広がる傾向があり、問題化しやすくなっているのも事実。この観点から、企業側がしっかりと問題点を見定めてコンプライアンス意識を持つことも成功していくための秘訣と言えるでしょう。
次回の【世代別成功モデル】は、シリーズ最終回。アフィリエイトビジネスの成長によって生じた新たな問題点や近年の当たりパターンについてお伝えしていく予定です。また別のコンテンツもご覧いただければと思います。