前回のコラム【世代別成功モデル】CRMと定期転換率の重要性が高まった時期では、化粧品を中心に通信販売のビックプレイヤーが台頭してきた流れを紹介しました。第2世代では、初回購入後に定期コースへつないで回転数を上げることが主流になっていきました。
今回お伝えする第3世代前半(2000年代後半)では、大手企業の参入が増加していきます。なぜこのタイミングで大手が参入しやすくなったのかをひもといていきましょう。
ナショナルブランドと言われる大手企業で「セサミン」という成分を含んだサプリメントが代表例として有名ですが、2008年頃から大手メーカーの参入が比較的増えていきました。その理由として以下が挙げられます。
上記の3点が変化したことにより、大手メーカーが通販に参入しやすくなってきたのではないかと思われます。
それと同時に、この頃から初期における商品の販売効率(ROI)が少しずつ悪化してきて、初期段階の投資期間が長くなっていきます。その結果、企業の資本力が重要になってきて、小さな企業が通販事業に参入しにくくなっていきました。
また、健康食品などの商品種類が増えてきて、大手の研究力が魅力的=信用しやすいという状況になっていたということも理由として考えられます。
当然ではありますが、大手メーカーは、“高い資本力”と“優れた研究力”を持って参入してくるのでやはり拡大速度は速いです。この時代は、従来の指標を使ったスタイルだけではなく、これまでの成功事例を少しだけ堅実な目標値で進めることができるという資本力が武器だったといっても過言ではありません。
この時期、トライアルという考え方が登場しました。
「初回の価格を値下げするので、試してみてくださいね」とか、
「初回7日分をトライアルで送るので、無料で使ってみてください」といった方法でリストを集め、定期転換させる手法が増加していきます。
この手法は第2世代の後半くらいから始まっていましたが、第3世代になり初回のオファー価格を無料にしたり下げたりすることでさらに効率を上げていきました。低いCPAでしっかりとリストを取っていき、定期転換してもらう事業モデルです。
その観点でいうと、当然ですが初期段階は今まで以上に赤字になります。2006年くらいから始まった第3世代では、事業資金をどれだけ持っているかということが重要になります。広告効率の指標であるCPA、CPRを低く顧客を獲得し、定期転換率を上げていくモデルです。
定期コースへの転換後、商品回転数を3~4回以上回転させることを目標にして、どれだけLTVを上げられるかという点がポイントになります。そのため、初期段階ではどこまで赤字に耐えられるかという部分が勝負のしどころになっていたというのが現実です。
以上です。
第2世代から第3世代前半にかけては、広告の効率がだんだん悪化していき、企業の財務体質という部分が重要になってきました。そのため、参入障壁がどんどん上がっていき、大手が参入するメリットが増えたと言えるでしょう。
そして、第3世代の前半は、単品リピート通販のビジネススタイルが変わり始めた分岐点になったのではないかと思われます。
次回の【世代別成功モデル】は、初回定期コースが始まった第3世代の後半の変化についてお伝えしていく予定です。また別のコンテンツもご覧いただければと思います。
※CPAとは
Cost Per ActionまたはCost Per Acquisitionの略で、広告における顧客獲得単価を表します。広告費を成果件数(コンバージョン数)で割って算出します。
※LTVとは
Lifetime Valueの略で、顧客生涯価値を表します。1回の取引で得られる利益でなく、ある顧客が取引を開始してから終了するまでに、どれだけの利益をもたらしてくれるかを示した数値です。新規顧客の獲得を目標とするのではなく、顧客の定着化を目標とする上で重要な数値。算出方法は複数があるが、最も簡単な計算式は「LTV=平均購入単価×収益率×購買頻度×継続期間」となります。