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メリットが多い広告制作のインハウス化を徹底解説! 失敗しないために気をつけるべきことは?

近年、広告制作のインハウス化が進んでいるように感じています。

インハウス化とはその名の通り、広告制作を社外に依頼するのではなく、自社内にクリエイティブチームやセクションを設けることです。マジワンではインハウス化に向けたクリエイター教育や、インハウス化支援を行っているのですが、ここ数年で問い合わせが増えている印象を受けます。

様々なメリットがある広告制作のインハウス化ですが、実は進め方を間違えてしまうと「うまく軌道に乗らない」、「コストが無駄にかかる」といったマイナス点が生じてしまいがちです。

そこで、今回は社内にクリエイティブチームを作ることのメリットと、マジワンにお問い合わせくださった企業様からヒアリングした「インハウス化で行き詰まってしまったポイント」の両面からインハウス化について徹底解説していきます。

まず、インハウス化することによるメリットは、大きく分けると2つ。

  • ノウハウの蓄積
  • 品質管理のしやすさ

それぞれを詳しく解説していきましょう。

インハウス化のメリット①:ノウハウの整理と統一化

インハウス化のメリット1つ目は、ノウハウの整理と統一化です。

インハウス化による最大のメリットが、ノウハウの蓄積ではないでしょうか。もちろん、社外に依頼したらノウハウが蓄積できないというわけではありません。しかし、外注している広告代理店や制作会社からすべての情報が共有されるわけではないため、厳密に言うと「完全にはノウハウが蓄積できていない状態」になってしまいます。

その点、インハウス化を行うと、社内でクリエイティブPDCA(Plan、Do、Check、Action)の一連の流れが回せるようになります。企画→検証→実施→振り返りという4 サイクルを、主軸として回せるメリットは大きいのではないかと思います。

また、外注の場合は代理店とのコミュニケーションが必要になるため、スピードにも限界があります。社内で回すことにより、何が良くて何がダメだったのかっていう部分の比較検証がスピーディーに行えることは間違いありません。クリエイティブのPDCAが回しやすくなることで、それらがノウハウとして社内に蓄積していくことがまずひとつの重要なポイントと言えるでしょう。

もう1点のノウハウという意味で言うと、純粋な制作ノウハウ(作り方のノウハウ)です。どういった指示を出せばどのような仕上がりになってくるのか、どういったところが制作のポイントなのかという部分で、作り方のノウハウと、企画検証(ナレッジ)に近いノウハウの2つが育成されやすくなります。ノウハウというのは言語化することでノウハウになるので、社内で言語化されるという部分がすごく大事です。

そして、この2種類のノウハウがしっかりと言語化されることによって、自社の商品ブランドについての言語レベルが高まっていき「僕たちの商品ってこういう商品だったよね」という形で商品のブランド育成につながるというのが大きなポイントです。

ノウハウの蓄積には、一時的なメリットである「広告効率が上がったり 制作効率が上がったりする」というものと、長期的なメリットである「ノウハウがたまっていくことで、高いレベルでブランディングの言語化ができるようになっていく。その結果、ブランド育成ができる」という2段階のメリットがあります。

インハウス化のメリット②:品質管理のしやすさ

インハウス化の2つ目のメリットとして、品質管理のしやすさが挙げられます。
制作スピードが上がるという点はもちろんですが、指示面、コスト面の部分でも品質管理がしやすくなるはずです。

まず、細やかな対応や、こっちを急ぎでといった部分の融通が利くのは社内制作ならではのメリットですよね。どのような会社でも同じだと思いますが、社外に依頼するより社内の人間に頼むほうが、自由が利きやすかったり、優先度の調整がしやすかったりするのではないでしょうか。そのため、インハウス化することで工程管理の自由度が高くなるという点は大きいです。

それに加え、社内の人材を使うほうが人件費的にも効率が良くなるというケースも多いように感じられます。例えば、ランニングコストが固定されることによって制作面のコストダウンにつながったり、年間予算を組みやすくなったりするという部分は利点だと思います。

上記のように、インハウス化の大きなメリットは、主に「ノウハウの蓄積」と「品質管理」の2点だと考えています。

しかし、思い切ってインハウス化を進めたものの、うまくいかずに失敗してしまったというケースも存在しています。次に、広告制作のインハウス化で失敗につながりがちなポイントを解説していきましょう。

インハウス化の壁①:体制構築による壁

初めてのインハウス化でどうしたら良いのか分からない・・・という部分が、2つのパターンで壁になりがちです。

・最初の立ち上げ方が分からない

1つ目は、教育体制がないため、どうしたら良いのか分からずに動けないというケースです。
クリエイティブチームの組織構築をしたことがある経験者が少ないと、どのように立ち回っていいのか分からないというケースが往々にして出てきます。

例えば、本当に何から始めていいか分からないケースの場合、立ち上げ当初でどういったことをしていいのか分からず本当に動けなくなります。せっかくデザイナーさんを入れてはみたものの、その後の動き方が分からずに残念ながら組織が立ち上がらなかったということが起こりえます。

・人材育成体制が整わずチームが継続できない

2つ目は教育体制の不備です。立ち上げはうまくいったけれども、その後の教育体制が整わずに特定の人間に負荷が偏ってしまうパターンですね。この場合、その方が退職するとチームがなくなってしまう可能性が高まります。

立ち上げ後の教育体制がしっかり整わないと、どうしてもチームが“俗人化”してしまいがちです。「蓄積すべきノウハウが、正しく共有されていないこと」がインハウス化の壁になってしまうことがあります。

インハウス化の壁②:外部情報の遮断による壁

2つ目の壁は、外からの情報が集まりにくくなるという点です。社内で制作しながら企画ノウハウのような部分を蓄積していくと、どうしても外のパートナーさんに頼る機会が減ってきます。その結果、広告制作会社さんや代理店さんの持っているトレンド情報などが手に入りにくくなります。

本来は外部から収集した情報もノウハウのひとつになるはずですが、社内のクリエイター教育に重きを置きすぎてしまった結果、社内で考えよう考えようとし過ぎてしまってノウハウとの整理が追いつかなくなり、結果的に回りにくくなる可能性があります。

インハウス化の壁③:品質管理の失策による壁

3つ目の壁は、品質管理における失策です。一例として、以下のようなケースが見受けられます。

クリエイターの能力に合わせられずコストがかさむ
  ▼
離職率の上昇によるコスト高騰
  ▼
離職を恐れすぎてクオリティが下がる

品質を一気に上げようとし過ぎると、社内のクリエイターが対応できるレベルを大きく超えた要求になってしまったり、不慣れなものを依頼しすぎてしまってコスト効率が悪くなったりしてしまいがちです。しかも、要求が高くなりすぎると社内に少し圧力のようなものが出てきてしまい、それに耐えられないクリエイターの離職率が上がります。

クリエイターの離職が増えると、そこまで時間をかけて育成してきたコストが無駄になってしまうため損になってしまいかねません。大きなメリットとして捉えていたインハウス化によるコストダウンが意味をなさなくなってしまうのです。

とはいえ、クリエイターの離職を恐れすぎて甘くなる(ホワイト化しすぎるとも表現できる)と、今度は修正の速度が遅くなったり、求めている品質が担保できなかったりするケースが生じます。そのため、このバランスをどのように調整するのかという点が重要になってきます。

まとめ

インハウス化によるメリットは、以下の3点。

  • クリエイティブPDCAが回しやすい
  • ノウハウの蓄積できる
  • 自社ブランドが育成しやすくなる

そして、障壁となりやすいのが、以下の3点でした。

  • 経験者またはアドバイザーがいないと、新規の体制構築が難しい
  • 外部からの情報が遮断されやすい
  • コストと品質管理のバランスが取りにくい

目指すべきゴールが「ノウハウ蓄積とブランド育成重視」なのか「製作工程の効率化重視」でインハウス化の進め方が大きく変わってきます。自社の理想像を明確にすることと、メリットだけでなく、失敗につながりやすいポイントを事前にしっかりと理解した上で、体制を整えることが成功の鍵となるでしょう。

以上です。
今回は、インハウス化におけるメリットと障壁になってしまいかねないポイントについてお伝えしました。インハウス化を行う目的が明確でないと、方向性を見失って失敗しかねないため気をつけましょう。マジワンは外部アドバイザーとして、インハウス化のお手伝いやクリエイター教育を行っています。インハウス化で困りごとがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

次回は、マジワンの経験に基づいた「インハウス化における注意点とそのプロセス」についてお伝えしていく予定です。
それでは、また別のコンテンツもご覧いただければと思います。

マジワン
この記事を書いた人
福岡のプランニングエージェンシー「マジワン」が運営するLABの管理人。 ダイレクトマーケティングコンサルタント/クリエイティブディレクター/プランナーとダイレクトマーケティングでの長い経験から、幅広くサポートします。 デジタルからオフライン、新規広告からCRM、そして商品開発と新しいアイディアを横断しながら実践しています。売上アップのための仮説と実証を繰り返しながら、マーケティングという社会実験を楽しんでいます。

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