前回は通販業界のターニングポイントとなった1995年を中心に、EC市場の拡大や変化についてお伝えしてきました。今回は、2000年代後半からの大きな変化についてお伝えしていきます。
まず、2000年代後半で生じた最も大きな変化は、海外から仕入れた商品をテレビ通販で販売する新しいビジネスモデルの台頭ではないでしょうか。誰もが「一度は聞いたことがある」というほど話題となった商品が販売され、一世を風靡しています。そして、2009年には現在の「B2C」「D2C」において、非常に影響の大きなできごともありました。
経済産業省がまとめた統計によると、2005年のB to CのEC市場規模は約3.5兆円でしたが、2009年までの4年間で約2倍に拡大。なぜこれほど急激に成長したのか、まずはこの部分から見ていきましょう。
2006年にショップジャパンを運営するオークローンマーケティング社が発売した「ビリーズブートキャンプ」のDVDが大反響。米軍の訓練をベースにしたビリー隊長のエクササイズプログラムが一大ブームとなります。これにより、インフォマーシャル系の成功事例が増えました。テレビショッピングをきっかけに通販に対する認識が変化し、認知度が高まることで購入者が増大し、さらに通販業界が盛んになっていきます。
また同時期に、大手も含めて「無料モニター募集」のような形で会員を募集する企業が増えてきました。従来は会員登録することで本商品を割引価格で試せるといった手法がメインでしたが、商品を無料提供することで一気に会員を獲得し、そこから定期コースへ引き上げていくような手法へとしだいに切り替わっていきます。
ビリーズブートキャンプのように一発で売って儲けるというスタイルから、徐々にLTV(顧客生涯価値)という考え方に変化してきたのがこの時代です。クライアントの指標もMR(メディアレーション)がメインだったところから、LTVを見ながら目標値を検討するCPO(新規顧客の獲得単価)のような概念が出てきました。
その後、2009年にカタログ通販企業「セシール」がフジテレビグループに買収されます。これにより、メディアによる通販拡大の流れができ始めました。
また、同年にAmazonが国内通販売上高で初めて首位に立ちます。その年の2位以下は、ベネッセ、アスクル、千趣会、ニッセン、ジャパネットたかた、ジュピターショップチャンネルという顔ぶれです。1900年代にはカタログショッピングが通販の主流だったのに対し、2000年代に入って順位が大きく変化しました。この時期は、個人情報の取扱が上手な企業ほど売上が伸びていた印象があります。
2009年9月、内閣府に「消費者庁」および「消費者委員会」が設置されました。
ここから消費者庁を中心に、再び法整備が進んでいく流れとなります。ただし、この時代はまだそれほど指導ルールが厳しくなく、未整備な部分が多かったのも事実です。そのため、比較的「強い広告」が出ていた時期でもあるといえるでしょう。ここから2012~13年にかけて徐々に指導が増えていき、2014年の「課徴金制度」ができてからは、明確なルールができあがりました。
通販の変化は、物流などの「ネットワーク網の整備」、「メディアの発展」、「法整備」の3つの視点から歴史を見ていくことが重要ですが、この時代においては「消費庁」という消費者問題の専門省庁ができたことが「B2C」「D2C」においてかなり大きな出来事と言えるかもしれませんね。この時代に行なわれた法整備は、かなりスピーディーに対応を行なっている点が特徴となっています。先回りすぎるほどの速度で進んだと言っても過言ではありません。
以上です。
今回は、通販の歴史シリーズ第5弾として、2000年代後半の大きな変化とその背景についてお伝えしました。次回は、いよいよこのシリーズの最終回。2010年以降の通販の変化についてお伝えしていきます。
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