通販業界のクリエイティブ改善において多くのマーケターの関心を集める、マジワンラボの人気企画「勝手にブラッシュアップ」。今回は、内臓脂肪対策を訴求する機能性表示食品の折込チラシを取り上げます。
内臓脂肪というキーワードが登場すると、必然的にダイエットや健康意識に関連した訴求が展開されます。ダイエット市場は裾野が広く、年齢・性別を問わず多くの消費者が関心を寄せる分野です。
そのため、「どのようなマーケティングテクニックが使われているのか」「どのポイントに注目すれば効果的な分析ができるのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、業界でもトップクラスの実績を誇る大手通販企業によるチラシを題材に、成果の理由とさらなる改善のヒントを探っていきます。
なお、実際の広告を用いて説明していきますが、著作権の問題があるため、特定の商品だと判断できるような商品名、本文、連絡先等が分からないように加工させていただきました。その点をご理解ください。
このチラシを展開しているのは、通販業界で長年の実績と信頼を築いてきた企業です。市場シェアにおいてもNo.1クラスとされており、現状の広告でも目標を安定的に達成できていると見られます。
注目すべきは、「体験談や共感要素を表に出す」ような王道パターンを取らず、チャレンジを控えた構成でも成果を上げている点です。その理由として考えられる2つの要因を見ていきましょう。
このチラシの最大の特徴は、“攻めすぎていない設計”です。ビジュアルやキャッチコピー、ストーリー性を過剰に盛り込むことなく、シンプルかつ整然とした構成で構築されています。
背景には、テレビCMとの連動が考えられます。実際、紙面左上には「テレビCMでも話題」といったコピーが配置されており、視聴後に折込チラシで刈り取る構造が想定されます。
折込チラシは、テレビ広告との相乗効果が得られやすい媒体です。実際に、テレビ放映翌日の折込チラシのレスポンスは通常より1〜2割向上するとのデータもあります。このようなタイミングを捉えた「刈り取りチラシ」は、過剰な情報よりも信頼感と申し込みのしやすさを重視する傾向があり、今回のチラシもその戦略に沿っていると言えるでしょう。
この商品を展開しているメーカーは、通信販売業界では歴史が長く、売上実績も高い企業です。ブランド力がすでに認知されているため、チラシ上であえて冒険的なコピーや体験談を盛り込まずとも、一定の信頼を得やすい土壌があります。
このような企業の場合、「今のクリエイティブで成果が出ているなら、大きく変えない」という合理的な判断がなされることも少なくありません。チャレンジを避け、安定的に成果を積み重ねる戦略が今回のチラシからも読み取れます。
シンプルだからこそ、メリハリを付けたり、ブラッシュアップしたりする余地があるのではないか・・・。
ということで、マジワンの視点からもう少し向上させるためのブラッシュアップをしていきたいと思います。
現状に満足せず、「あと一歩」の改善を積み重ねることが成果を最大化する鍵です。以下では、マジワン視点で考える実践的なブラッシュアップの方向性を3つ紹介します。
チラシのトップキャッチに年齢層を意識したコピーを入れることで、「これは自分向けの情報だ」と認識されやすくなります。
たとえば、
といった表現を導入部に加えると、チラシの滞留率と視認性を高めることが可能です。
ポイントは、自分ごと化の要素をどのパーツに、どの程度入れるかという設計バランスにあります。
現在のチラシでは、体験談や「あるある」要素があまり表に出ていません。しかし、共感と信頼を得るうえで体験談は非常に有効です。
読者と同世代・同じ悩みを持つ人物の体験談や一言コメントを掲載するだけでも効果があります。
たとえば、
といったリアルな声を簡潔に差し込むだけでも、心理的ハードルを下げられます。
次に、裏面の構成に目を向けてみましょう。価格や申込方法、電話番号といった情報がやや散らばって配置されており、視線誘導が難しい構成になっています。
改善策としては
このように申込導線を整理することで、読者が「買いたい」と思った瞬間にスムーズに行動できる状態をつくることが可能です。
直接的なデザイン改善ではありませんが、受付時間の調整も重要な改善要素です。
現在のチラシでは、コールセンターの受付時間が一般的な午前9時〜午後9時となっています。しかし、ターゲットが高齢層中心である場合、午前7〜8時台に電話受付を開始するだけで、反応率が向上するケースもあります。
特にテレビCM翌日の朝刊折込チラシなどでは、早朝の申し込みが集中するため、時間外=機会損失になるリスクを考慮して、受付体制の柔軟な見直しも検討の余地があります。
今回のチラシは、大胆な表現変更をせずとも成果を上げている堅実な設計の好事例でした。とはいえ、これ以上改善しようがないわけではなく、細かな工夫の積み重ねがさらに大きな成果につながる余地は残されています。
制作方針に制約があっても、
ブランドイメージを崩さずに、
小さな改善で着実に成果を出す。
こうした“変えられない中で行う、変える工夫”こそが、今後のオフライン広告の鍵を握る考え方ではないでしょうか。
特に、テレビCMと連動するような大規模キャンペーンでは、大きな構成変更が難しい場合もあります。その際は、今回紹介したような「年齢ワード追加」「申込導線の整理」「受付時間の最適化」など、ピンポイントのブラッシュアップが真価を発揮するケースもあるでしょう。
以上です。
成功している今こそ、細部にこだわる。
それが、競争激化する通販業界で「選ばれ続けるブランド」になるための戦略なのかもしれません。
今回は仮説ベースの改善提案ではありますが、折込チラシの改善手法として、少しでもヒントになれば幸いです。
次回も、異なる企業の折込チラシをマジワン目線でブラッシュアップしていきます。楽しみにしていてくださいね。
また別のコンテンツもご覧いただければと思います。