前回のコラム【世代別成功モデル】大企業の参入とトライアル文化のはじまりでは、大企業が高い資本力と優れた研究力で通販事業に参入してきたことをお伝えしました。2010年くらいからはじまる第3世代の後半では、初回から定期コースに加入してもらうというスタイルの広告手法が誕生し、新たな成功事例となりました。この初回定期コース導入をきっかけに、流れが大きく変わっていきます。なにが、どのように変化していったのかを見ていきましょう。
第3世代の前半では、初回の申込時に半額、980円、無料などお得に始めていただくプランを提供し、気に入ったら2回目から定期購入に移るというふたつのステップでした。しかし、この手法だと初回の効率は良くても、定期転換効率が良くないというケースがあり、テストをするポイントが多いため事業の拡大までに時間がかかることも少なくありませんでした。
そこで、第3世代後半になり「初回購入の時点で即定期コースに加入する」というモデルが登場しました。トライアル価格の目標値(低いCPO、CPA、CPR)で獲得できるという部分と、定期コース誘導コストが少ないという部分の双方のいいとこ取りをした感じになります。
初回から定期コースに加入するスタイルの場合、広告効率が良ければ定期顧客がしっかりと獲得できて財務体質も良くなりやすい傾向があります。そのため、こういった手法をうまく活用した企業は財務体質が向上していきました。この新しい事業モデルの登場でスピーディーに拡大する成功事例が数多く出てきたことから、リピート通販の参入企業が増えるほどのインパクトがあったと考えられています。
初回定期コースの登場はひとつの問題を生み出しました。
それは「従来のトライアルに慣れている方が、定期コース加入の内容を理解せず誤認して購入してしまう」という、消費者トラブルにつながったことです。2009年に発足した「消費者庁」もこの問題に取りかかることになります。その結果、特定商取引法(特商法)が改訂され、定期コース加入における法整備が進むことになりました。
こういったトラブルから、景品表示法など、通信販売にかかわるいくつもの法令規制の整備が行われていきます。以前の通信販売の歴史でも記載した通り、新しいビジネスモデルの誕生は、ときにトラブルを生むことがあり、それが法整備につながることになります。
近年の通販の成功事例において「法令遵守」がひとつのテーマとなっているのも事実であり、この情報のアップデートについていくことが企業の販売促進担当者にとっても重要です。
このように状況が変化していったなかで、今までと異なり「企業の認知度が高く、ブランドイメージも良く、資金力もある」というNB(ナショナルブランド)メーカーの成功事例が増える流れになっていきました。
その結果、比較的潤沢な予算がある企業と、ない企業で大きく差が開いていきます。大手だと初期のCPO/CPRが悪くても耐えられるため、2万円を超えているケースも少なくありません。あとは、この投資をどう回収できるのかという点が課題になっていきました。
当時の定期コースへの移行度は、良い時で40%くらい、通常は25~30%くらいであれば合格点だったように感じています。そして、定期コースが回転していき黒字転換するまでに、理想は6ヶ月、現実は10ヶ月くらいかかっていたようです。
つまり、
という2点が新規参入のひとつの目安だったと言えるでしょう。
この時代に成功するには、「指標」、「仕組み」、「お金」の3点をしっかりと作っていくことが重要でした。
初回定期コースの部分で言うと、良い時だと1万円弱くらいで定期加入へつなげられていました。この場合、もちろん初回で赤字は出ます。しかし、それ以降3~4回転すると黒字になるようなイメージですね。
なお、定期率が徐々に減っていくことを踏まえて、初回でいきなり6ヶ月の継続契約をしてもらうようなケースも多かったようです。ただし、強制的に定期コースに加入となってくると、さまざまなメディアで規制がありました。
当時は、3ヶ月以上回せれば黒字転換するような雰囲気が強かったと言えるでしょう。そのため、初回購入から定期コースの加入までを仕組みに入れておき、CPA/CPRの目標値が10,000~15,000円の間を下回れば、あとは定期を維持するという流れになることが多かったと感じています。
以上です。
第3世代は、キャッシュのある大手企業と、そうではない企業の指標が大きく分かれてきたイメージです。これ以降の世代の変化においても、やはり企業として“持っているお金(財務)”が非常に重要になってきて、“マネーゲーム”と言われるような状況になってきてしまっています。成功するためには、資本力と研究力が重要視されるようになってきたと言えるでしょう。
次回の【世代別成功モデル】は第4世代前半、アフィリエイトビジネスが活用されはじめた時代についてお伝えしていく予定です。また別のコンテンツもご覧いただければと思います。